Sweet Waltz - JOJI NAKAMURA

 

中村穣二は非常に穏やか、飄々としていながらも一本気な人。

日本のコンテンポラリーアートの中心にいる、そんなアーティスト達と親交が深い中村。ではその彼らと同じ文脈で作品制作しているのか?というとそういう訳でもない。さらに彼ら自身は、グループとしてというよりは、中村と個々に付き合い、点で繋がっている。そこにあるのはポジティブな意味での微妙な距離感。 彼らと中村との唯一の共通点をここで見出そうとするならば、彼らの多くは中村同様、美大出身ではないということ。アカデミックな正統派とは一線を画す。ただそれを「アール・ブリュット」とかそういう文脈にあてはめるのは、不自然さを感じる。

なぜか、そこは2020年代の日本であって、東京なのだから。

人口1400万人、治安が良く、清潔。渋谷、銀座、六本木、浅草、秋葉原、、、 東京に一度は訪れたことがある人なら感じる、「東京」と一括りにはできないような多様性。そして何よりも日本という国、その地にいなければわからない独特のユーモアやセンスが存在し、この目まぐるしく変化する世界の中、さらには世界中が混沌とする中で、この街は他の国の大都市とは比べられない独特な存在であることは間違いではない。現代アートという領域の中で、既に沢山の素晴らしいアーティストに影響を与えたこの魅力的な街。中村はこの世界でも稀に見る独特な空間で、呼吸し、作品を描いている。

中村自身の作品は、ここ数年で大きな変化を遂げている。抽象画、そして白黒の世界に魅せられて制作をしていた中村は、ある時から色彩をふんだんに使うようになった。そしてその頃から、丁度現在の作品に見られるような具象的な要素が生まれてくる。これは「安心する部分を作品に残したい」そう考える作家の願いが反映されており、さらにそれを思慮深く変化させた結果、【婦人像】という一連の作品群へと導かれていく。中村本人の言葉を借りれば、女性に対する強い「尊敬」や「憧れ」また、中村にとって女性は常に「ロマンティックな対象」であり、見たこともないものへの挑戦の中で常に安心感を持たせる対象なのである。

画家という生業はどうあるべきなのか?どういった作品を生み出したいのか?常に自問自答しながら、そして古き良き風習や伝統にも耳を傾けながら、唯一無二の画家を目指して中村は今日も作品を描き続けている。


本展、SWEET WALTSはGalerie Mikiko Fabianiにおける中村穣二、待望の初個展です。私共は約10年間、対話を重ね、画家の様々な変化を常に見守って参りました。人々を魅了する3拍子独特の優雅な踊り「ワルツ」のようなロマンティックな感覚を作品から感じ取って頂ければ光栄です。是非この機会にご高覧頂きたくご案内申し上げます。

作品へのお問い合わせはギャラリーまでお願い致します。

ファビアーニ美樹子